エントリーNO.293
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恋愛指南

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

航海術や馬術のごとく恋愛にも 技術(わざ) がある。 愛の名著か背徳の書か、詩人に名声と流刑をもたらした書は男女に濃やかな知恵を授ける。 遊びの恋、戯れの愛、酒脱と (みやび) とを離れず、 知的にことをはこぶには・・・<黄金のローマ>時代の社会や風俗を鏡のごとく映し出す奇書。

発行
岩波文庫 2008年8月19日 第1刷
著者名
オウィディウス  
タイトル
恋愛指南 (れんあいしなん)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    第一巻
 誰にもせよこの民のうちで愛する術を知らぬ者あらば、これを読むがよい。 して、この歌を読み、愛する知恵を心得て愛するがよかろう。 技術によって帆と (かい) をあやつってこそ、 船は海面をすみやかに渡るのであり、技術によって戦車も軽やかに走るのである。 技術によって愛もまた支配されねばならない。アウトメドンは戦車と柔軟な手綱をあやつるのに巧みであった。 ティフュスはハエモニアの舵取りであった。ウェヌスがこの私を年若い 愛神(アモル) の師匠に任じてくださったのである。 私は 愛神(アモル) のティフュスでありアウトメドンだと言われるであろう。
 確かにこの子は乱暴者で、しばしば私に逆らったりする。だが所詮は子どもでしつけやすく、指南を受けるのに適している。 フィリュラの子(ケイロン)は竪琴の音で少年時代のアキレウスを教育し、おだやかなこの技術によってその 猛々(たけだけ) しい心をなだめたものだ。


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