エントリーNO.277
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行動の機構

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

こころの働きには脳神経シナプスのダイナミックな結合や切断が重要な役割をなす。 それをはじめて体系的に論じたヘッブの記念碑的な著作。 心理学や神経科学、情報科学に与えた影響は計り知れない。 上巻では著者の問題意識と研究の設定、そして知覚のメカニズムから学習行動の神経機構について論じる。

発行
岩波文庫 2011年4月15日 第1刷
著者名
D.O.ヘッブ   
タイトル
行動の機構 (こうどうのきこう) 全2冊  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

 行動を理解し、人間のとらえどころのない思考を機械的因果の過程に還元しようとする心理学者の仕事が、 ほかのどのような科学者の仕事よりも困難であることは、異論のないところだろう。 確かに、課せられている問題はきわめて複雑だ。 ジェイムズ・ミル(James Mill)の亡き後を継いで、20世紀の心理学は、ミルの荒削りな連合理論を発展させてきたが、 その進歩の足跡は、同じ時間で物理科学が成し遂げてきた業績に比べて、勝るとも劣らないだろう。  しかしまた、心理学の理論は、依然として 揺籃期(ようらんき) にあることも事実だ。 われわれが化学反応の原理を理解している程度に、行動の原理を理解していると言えるようになるまでには、まだまだ遠い道のりがある。
 心理学者は、こうした困難な仕事に取り組むにあたって、おそらく助けを手当たりしだいに求めざるをえない。 たとえば、新しい数学的分析方法を発展させようとする試みが、数多くおこなわれるようになっている。 ただしこの本では、全般的にこうした試みについてあつかうつもりはない。 スピアマン(Spearman,1927)によって開発され、サーストン(Thurstone,1935)によって著しく改良された因子分析法は、 ある種のデータをあつかうのに強力な道具として十分確立されている。


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