エントリーNO.267
岩波文庫を1ページ読書
ヴィルヘルム・マイスターの修行時代

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

舞台は十八世紀封建制下のドイツ。一女性との恋に破れ、演劇界に身を投じた主人公ヴィルヘルムは、 そこで様々な人生の明暗を体験、運命の浮沈を味わう。 ヘルマン・ヘッセやトーマス・マンらが範としたドイツ教養小説の代表作。

発行
岩波文庫 2000年1月14日 第1刷
著者名
ゲーテ  
タイトル
ヴィルヘルム・マイスターの修行時代 (ヴィルヘルム・マイスターのしゅぎょうじだい) 全3冊  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    第一巻
     第一章
 芝居はひどく長びいていた。そろそろ馬車の音の聞こえるころだがと思って、 (ばあ) やのバルバラは二、三度窓辺に歩みよって耳をすました。 今日の切狂言で若い士官を演じて観客を熱狂させた美しい女主人のマリアーネを待っているのである。 ちょっとした夕食を用意しておくだけなのにいつになく 苛立(いらだ) っていた。 今日は、若い金持の商人ノルベルクが、遠く離れていても恋人のことは忘れないというしるしに送ってきた小包で、女主人を驚かしてやろうと思っているのである。
 バルバラは、婆やというだけでなく、友人、助言者、相談相手でもあり、家事の一切をまかされていたので、 勝手に包みをあけても叱られる恐れはすこしもなかった。 彼女は、気前のいい恋人の 思召(おぼしめし) を、 当のマリアーネよりも気にかけていただけに、今夜も好奇心をおさえることができなかった。


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