エントリーNO.265
岩波文庫を1ページ読書
ナジャ

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

パリの町で出会った妖精のような若い女・ナジャ----彼女とともにすごす驚異の日々のドキュメントが、 「真の人生」のありかを垣間見せる。 「わたしは誰か?」の問いにはじまる本書は、シュルレアリスムの生んだ最も重要な、 最も美しい作品である。 1963年の「著者による全面改訂版」にもとづき、綿密な注解を加えた新訳・決定版。

発行
岩波文庫 2003年7月16日 第1刷
著者名
アンドレ・ブルトン  
タイトル
ナジャ  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

 わたしは誰か?めずらしく (ことわざ) にたよるとしたら、 これは結局、私が誰と「つきあっている」かを知りさえすればいい、ということになるはずではないか? じつをいうと、この「つきまとっている」ともとれる言葉にはとまどいをおぼえる。それはある人々と私とのあいだに、 思いもよらなかったほど奇妙な、避けがたい、気がかりな関係をむすぼうとするからだ。 この言葉はもとの意味よりもずっと多くのことを語り、私に生きながら幽霊の役を演じさせる。 明らかにこの言葉は、いまの私という誰かになるために、私がそうあることをやめなければならなかった何かを暗示しているのだ。 ほぼ誤りなくその意味にとった場合、そこからこんなことがわかってくる。 つまり、私が私の存在の客観的な、しかも多かれ少なかれ確固としたあらわれだと思いこんでいるものが、 じつはその本当の領域についてまったく知らないある活動の一部であり、それがこの生活の枠内にやってきているにすぎないということである。


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