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エントリーNO.253
岩波文庫を1ページ読書
学問の曲がり角

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

「遊びながら哲学をしている」と哲学者田辺元に言わせるほど学問を楽しんだ河野与一(1896-1984)。 その該博な学識と旺盛な知識欲の対象は、「欠伸がうつる」の典拠や「プラトニック・ラブ」の由来、 といった問題にも及ぶ。 話題の豊富さと語り口の軽妙さから長く親しまれた『学問の曲がり角』の新編文庫版。

発行
岩波文庫 2000年6月16日 第1刷
著者名
河野 与一 (こうの よいち)  
タイトル
学問の曲がり角 (がくもんのまがりかど)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    Ⅰ
   アリストテレスの欠伸論
 もう余程以前のことになるが或る若い人から妙な頼みを受けた。 「欠伸がうつる」ということの古い出典をしらべてくれというのである。 何にするのかと訊いて見たら、暫くもじもじした末、実は今書きかけている小説の人物に一寸そういうペダンチックな言葉を使わせたいのですと打明けた。 では何故自分なんかのところへ来たのだと尋ねて見ると、今度は躊躇もなく、そういう下らないことをよく御存知のようですからという御挨拶であった。 そう出られては返す言葉もない。 しかし一体どの位古ければいいのかと念を押したところが、いつのでも構いませんけれどもギリシャかローマにあれば都合がよござんすと云う。 そうして「欠伸」がなければ「連れ小便」でも結構ですなどと勝手な注文をつけて行った。 どうせ字引でも頼りに遡るほか方法がないので Yawning is catching.とかDas Gahnen steckt an.とかOn baille en voyant bailler les autres・・・あたりから出発していろいろ探して見た。 そのうちに一番古いとは行かないにしても一番はっきりとしていると思われる説明がアリストテレスの『プロブレマタ』に出ていることを発見した。


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