エントリーNO.251
岩波文庫を1ページ読書
阿片常用者の告白

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

英国ロマン派屈指の散文家による自伝文学。 幼少期の悲哀、放浪の青春から 阿片(あへん) 常用の宿命の道程を描く。 阿片の魅惑と幻想の牢獄を透徹した知性と感性の言語によって再構築した本書は、 ボードレールはじめ多くの詩人や作家たちの美意識を方向づけた。

発行
岩波文庫 2007年2月16日 第1刷
著者名
ド・クインシー  
タイトル
阿片常用者の告白 (あへんじょうようしゃのこくはく)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    第一部
  読者へ
  慇懃(いんぎん) なる読者よ、小生がここ諸君の前に捧げるのは、 我が生涯の非常なる時期の記録である。 書き振り次第によっては、それはただ単に興味深い記録にとどまることなく、 可成りの程度、有益かつ教訓的なものになろうかと信じる。 小生がこれを書き上げたのも、まさしくかくの如き希望を抱いたからであって、これこそ、およそ自らの過ちや弱点を人前に (さら) すことを禁じる () の繊細にして高潔な慎みを敢えて犯した 所以(ゆえん) 、 わが弁明にほかならない。 実際、 英吉利(イギリス) 人の感情にとり何がおぞましいと言って、 自分の心の 潰瘍(かいよう) あるいは傷痕を 不躾(ぶしつ) けにも他人の眼前に見せつけ、 時の流れや、あるいは弱さゆえの人間の罪を (ゆる) す寛容の心が、その上を被い隠しおおせてきた折角の「礼儀正しい衣装」を引き裂いてしまう、そんな人間の狼藉ほどにおぞましいものはない。


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