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エントリーNO.248
岩波文庫を1ページ読書
即興詩人

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

歌姫アヌンツィアータに思いを寄せる青年詩人アントーニオ。 南国イタリアの自然と人物を背景にくりひろげられるアンデルセンの愛の物語「即興詩人」は、 永遠の青春文学として、いつの時代にも読みつがれることだろう。 流麗明快なデンマーク語からの原典訳に、自身のイタリア旅行スケッチをそえる。

発行
岩波文庫 1983年6月20日 第23刷
著者名
アンデルセン (訳者 大畑末吉)  
タイトル
即興詩人 (そっきょうしじん) 全2冊  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    第一部
   一 わたくしの最初の境遇
 ローマに行かれたことのある人は、美しい噴水のあるバルベリーニ広場をごぞんじでしょう。 半人半魚の海神トリトーンがほら貝を高く吹き上げていて、 その貝から水が数メートルの高さにほとばしりでています。 たとえローマに行かれたことのない人でも、この広場のありさまは銅版画などでごぞんじでしょう。 ただ残念なことには、そのような絵にはフェリーチェ街のかどにある一けんの高い家がえがかれていないことです。 その家の壁に取りつけた三本の管からは、下のほうの石の水盤に水が流れ落ちています。 ----この家こそわたしにとっては、特になつかしい、たいせつな家なのです。 なぜなら、わたしはその家で生まれたのですから。 幼いころのことをふりかえってみますと、さまざまな思い出が限りなくもつれあっていて、なにからお話したらよいか、とほうにくれてしまいます。 劇的ともいえそうなわたしの生涯を見わたして、さて、どういうふうに言いあらわそうか、どれをさほど重要でないものとしてはぶこうか、 どれが全体のかなめとしてたいせつだろうか、と考えますと、いよいよわからなくなります。 わたしにとって興味のあることでも、ほかの人にはそうでないかもしれません。 それはそれとして、わたくしはこの長い物語をともかく、ありのままに気どらずに語ってみようと思います。 とは言いましても、とかく人に気に入ろうとするいとわしい虚栄心がまぎれこんでこないともかぎりません。


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