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エントリーNO.241
岩波文庫を1ページ読書
恐慌論

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

資本主義経済に特有な恐慌現象の必然性を、その根拠と発現の機構にわたり原理的に論証する。 日本の代表的マルクス経済学者宇野弘蔵(1897-1977)の記念碑的著作。 恐慌は、なぜ、どのようにして発生するのか? <宇野理論>の精髄を伝え、現代の資本主義と社会主義の再考にも多大な示唆と影響をあたえる恐慌研究の白眉。
(解説=伊藤誠)

発行
岩波文庫 2010年2月16日 第1刷
著者名
宇野 弘蔵 (うの こうぞう)  
タイトル
恐慌論 (きょうこうろん)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    序論
 一九二九年の十月のニューヨーク株式市場における 瓦落(ガラ) を契機として勃発した恐慌は、 最近における最も深刻なる、極めて広範囲にわたる世界的大恐慌であった。 三十年代前半はそれがためにこれもまた極めて深刻な世界的不況が続いた。 世界主要資本主義諸国はいずれもこの不況をそのままにしておくわけにはゆかなかった。 あらゆる手段をつくしてその「救済」をはかったのである。 三十年代の諸国が特に著しく国家主義的傾向を強化し、やがては第二次世界大戦を惹起するようなことになったということも、 その根本的原因は、この経済的過程にあったということができるのである。 ところがこれほどの大恐慌も、その前年までは、アメリカではほとんど誰れ一人として予想しなかった。 いわゆるフーヴァー景気として知られる繁栄が続いて、第一次大戦後の世界的な慢性的農業恐慌さえ問題にされなくなっていたのである。 一九二八年の大統領選挙戦当時「フーヴァーはアメリカ国民に対して、台所にはいつも鶏が二羽用意されており、 ガレージには自動車が二台ある、これがどこの家庭でもあたりまえの生活水準と考えられるようになろう、と断言した」のであった。


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