エントリーNO.235
岩波文庫を1ページ読書
ぷえるとりこ日記

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

NY(ニューヨーク) の女子大生が 米国準州(プエルトリコ) へ調査旅行に。 留学生崎子と団長ジュリアの日記が映すアメリカ人、日独メキシコ人、島民たちの反応は? 漁村の家族・独立党の面々・未来の大統領候補と噂の青年、、、。 乾いた笑いで人種感覚を突く青春小説。(解説=満谷マーガレット)

発行
岩波文庫 2008年9月17日 第1刷
著者名
有吉 佐和子 (ありよし さわこ)  
タイトル
ぷえるとりこ日記 (ぷえるとりこにっき)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

 <会田崎子の日記>
 四月というのに大雪続きで、おまけにニューヨーク名物の春の突風が吹きまくるものだから、 夜になって家から一歩出ると震え上るような寒さだった。 今日から三週間、 常夏(とこなつ) の国プエルトリコで過すのだからと思い、 袖無しの夏のワンピースの上に皮の外套を着たのだが、徒歩十分で着くミルブリッジ大学までの道の半分で凍死しそうになってしまった。 白雪を蹴立てて学生アパートに駈け帰り、ナイロンストッキングをタイツにはき替え、 厚いセーターを着こみ、靴もブーツにして、頭にはウールのネッカチーフをする。 なんのことはない、カナダへ出かけるのと寸分違わない格好なのである。 母家(おもや) のハーズ夫人が窓から私を見かけてどうしたのかと訊くので、
「予定が変更になって急にアラスカへ出かけることになったわ」
 冗談をいったら真にうけて、それでは革のコートでは寒かろう、私の毛皮のコートを貸してあげようという。


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