エントリーNO.234
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人間の学としての倫理学

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

「倫」はなかま、「理」はことわり、すなわち「倫理」とは、 人間共同態の存在根底としての秩序である。 主著『倫理学』の方法論的序説とされる本書で和辻は、 アリストテレスからマルクスにいたる西洋哲学の人間観と方法を十分に咀嚼した上で、 人倫の体系としての倫理学という独自の筋みちを提示。 日本倫理学に革新をもたらした。(解説=子安宣邦)

発行
岩波文庫 2007年6月15日 第1刷
著者名
和辻 哲郎 (わつじ てうろう)  
タイトル
人間の学としての倫理学 (にんげんのがくとしてのりんりがく)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  第一章 人間の学としての倫理学の意義
    一 「倫理」という言葉の意味
 倫理学とは何であるかという問に答えて、それは倫理あるいは道徳に関する学であると言うならば、 そこには一切が答えられているとともにまた何事も答えられておらない。 倫理学は「倫理とは何であるか」という問いである。 だからそれがかかる問いであるとして答えられるのは正しい。 しかしそれによってこの問いの中味には全然触れられるところはないのである。 従ってこの問いの中味は倫理学自身によって明らかにせられるほかはない。
 倫理学についていかなる定義を与えようとも、それは、問いを問いとして示すに過ぎない。 答えは結局倫理学自身によって与えられるほかはないのである。 倫理学は倫理的判断の学であるとか、人間行為の倫理的評価の学であるとかと定義せられる。 しかし倫理的判断とは何であるか、人間行為とは何であるか、倫理的評価とは何であるか。 それは既知量として倫理学に与えられているのではなく、 まさに倫理学において根本的に解るべき問題なのである。


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