エントリーNO.233
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老年について

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

古代ローマの政治家・文人大カトーが文武に秀でた二人の若者を自宅に招き自らの到達した境地から老いと死と生について語る、 という形をとった対話篇。 古代ローマの哲学者・政治家キケロー(前106-前43)が人生を語り、老年を謳い上げる。

発行
岩波文庫 2004年1月16日 第1刷
著者名
キケロー  
タイトル
老年について (ろうねんについて)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

        一五〇年、八十四歳になる大カトーの邸にて
  一
 献辞
ティトゥス様、もし (わたくし) 一臂(いっぴ) の力をお貸しして、 今その 御胸(みむね) に突き刺さり、 あなたを焼き焦がし (まろ) ばせる心痛を軽くしてさしあげたなら、 ご褒美は何となりましょう。

アッティクス様、

 大いなる資産はかけれど、信義に篤い () の男は、 フラーミニーヌスにこう語りかけましたが、わたしも同じ詩行を用いてあなたに語りかけることが許さるましょう。 もっとも、フラーミニーヌスとは違って、

 ティトゥス様、あなたが夜となく昼となく、心を乱されている

わけでないことは、よく分かっています。あなたの克己心と平常心はかねてよりよく存じていますし、あなたがアテーナイから「アッティクス」という 綽名(あだな) のみならず、 教養と思慮をも持ち帰ったことも、了解していますから。 そのあなたにしてなお、時にはこのわたしと同じく、昨今の情勢に激しく動揺することがあるのではないかと案じますが、それを慰めることは余りにも大仕事だし、 別の機会に譲らねばなりません。 今はただ、老年というものについていささか書き記して、あなたに献じるのがよいと思ったのです。


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