エントリーNO.230
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サイバネティックス

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

心の働きから生命や社会までをダイナミックな制御システムとして捉えようとした先駆的な書。 本書の書名そのものが新しい学問領域を創成し、自然科学分野のみならず、社会科学の分野にも多大な影響を与えた。 現在でも、人工知能や認知科学、カオスや自己組織化といった非線形現象一般を解析する研究の方法論の基礎となっている。(解説=大澤真幸)

発行
岩波文庫 2011年6月16日 第1刷
著者名
ウィーナー  
タイトル
サイバネティックス  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  第T部
   1948
  序章
 この書物は、当時ハーバード大学医学部に在職し、現在はメキシコの国立心臓医学研究所(Instituto Nacional de Cardiologia)にいるアルトゥーロ・ローゼンブリュート (Arturo Rosenblueth)博士とともに10年以上前から行なってきた一連の研究の成果である。 ローゼンブリュート博士は故キャノン(Walter B. Cannon)博士の同僚でもあり、共同研究者でもあって、その頃、科学の方法についての月例討論会を主宰していた。 参加者はおもにハーバード大学医学部の若い科学者たちであった。 われわれはよく、夕食のとき、バンダービルト・ホールの丸テーブルを囲んで集まったものである。 そこでの会議は活発で遠慮のないものであった。 だれも権威者としておさまるようなことは、すすめられもせずできもしなかった。 食後は、仲間かお客のだれかが立上がって、何か科学上の話題について話したが、たいていの場合は科学的な方法論の論議が最大の、 少なくとも主要な、問題とされるような事柄が選ばれた。 それがすむと、講演者は、善意からではあるが遠慮会釈のない鋭い批判のむちをうけなければならなかった。 未熟な思いつき、自己批判の不足、度のすぎた自信、派手は態度などは徹底的にやっつけられた。 批判の鋭鋒にたえられない人々は、二度と会合に出てこなかった。


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