エントリーNO.226
岩波文庫を1ページ読書
ジョウゼフ・アンドルーズ

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

<英国小説の父>とも呼ばれるフィールディング(1707-54)。 この小説は、当時人気を博していた書簡体小説『バラミ』に対抗して書かれた。 人間性にたいする鋭い洞察、真実に徹した精神を喜劇の衣に包んで表現。 虚飾を嫌い、庶民の大らかな善良さを愛する作者の意識が全編を覆い、 <物語>を読む原初的な楽しさに満ちている。(全2冊)

発行
岩波文庫 2009年4月16日 第1刷
著者名
フィールディング  
タイトル
ジョウゼフ・アンドルーズ 全2冊  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

   ジョウゼフ・アンドルーズ(上)
  第一巻
  一 伝記一般、とくにパミラ伝について---あわせて
    コリー・シバーその他につき一言
 百の教訓よりも一つの実例が心に深い感銘を与えるということは、 陳腐(ちんぷ) ながら真理である。 憎むべく (とが) むべき事柄についてもそうであるが、 愛すべく褒むべき事柄についてはいっそうしかりである。 後の場合にあっては、競争心というものがすこぶる巧妙にわれらに作用して、 抵抗しがたいまでにわれらの模倣心を 刺激(しげき) する。 されば一人の善人の存在はその知友全部にとって不断の教訓となり、そのせまい一団の中では良書などよりもはるかに大きな効果を発揮するのである。
 ところが往々にして最良の人物は人に知られることが少なく、したがって実例としての効能を遠く及ぼすことができない。 ここに文筆の士の力を借りてその伝記を広め、敬愛すべきその人たちの姿を、原物を知るしあわせにめぐまれない人々にまで 髣髴(ほうふつ) させることが考えられてくる。 こうなると、このような貴重な典型を世に伝えることによって、これら文筆の士が人類に寄与するところは、最初にその典型を提供した当の人物のそれよりも、 いっそう 宏遠(こうえん) ともなりうるであろう。


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