エントリーNO.219
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精神の危機

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

第一次世界大戦後「精神の危機」を書いたボール・ヴァレリーは、 西欧の没落に警鐘を鳴らし、人間における<精神>の意味を根本的に問い直した。 先端技術の開発にしのぎをけずり、グローバル化する市場経済の盲点を逸早く洞察し、 「歴史」の見方に改変をせまった数々の論考は、21世紀の現代に通じる示唆に富んでいる。

発行
岩波文庫 2010年5月14日 第1刷
著者名
ポール・ヴァレリー   
タイトル
精神の危機 (せいしんのきき) 他十五編  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

   精神の危機  他十五編
 精神の危機
  第一の手紙
 我々文明なるものは、今や、すべて滅びる運命にあることを知っている。
 これまでも跡形もなく姿を消した多くの世界、すべての乗員・機関もろとも深淵にのみこまれていった数々の帝国の話を耳にしてきた。 それらはすべて、彼らの神々、法律、学術の府、純粋、応用諸科学、文法、辞書、古典、ロマン派、象徴派、批評家たち、批評家の批評家たちもろともに、 諸世紀の測り知れない深淵に沈んでいった。我々はすでに知っていたのだ、目にみえる大地はことごとく灰塵で作られ、灰塵は何かのしるしであることを。 我々は歴史の厚みを通して、かつて財宝と精神を積んでいた巨船の幻影を垣間見てきたのである。 その数は我々には数えきれないほどある。しかしそれらの難破は、つまるところ、我々の関与するところではなかった。


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