エントリーNO.215
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無知について

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

善良だが無知と同時代知識人の批判を (くら) った著者は? アリストテレスを神とみて哲学=自然科学とする一派への論駁と、 人間主義と反権威主義、文献収集と古典語研究、雄弁やプラトンをめぐる基本構想を具体的に述べたルネサンス人文主義の 宣言書(マニフェスト) 。 晩年の主著。

発行
岩波文庫 2010年3月16日 第1刷
著者名
ペトラルカ  
タイトル
無知について (むちについて)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  桂冠詩人フランチェスコ・ペトラルカの書
  自己自身および他の多くの人の無知について
    T 序----新しい厄介な戦いを強いられて
いったいわたしは安らぎを得ることがないのでしょうか。 このペンはいつも戦わねばならないのでしょうか。わたしにはひとときの安息もないのでしょうか。 毎日のように友人たちの賞賛に (こた) え、 毎日のように敵対者たちの挑発に応えなければならないのでしょうか。 わたしの隠栖も嫉妬を締め出さず、時の経過も嫉妬を消し去らなかったのでしょうか。 わたしは、人類が労をいとわず躍起になって得ようとしているほとんどすべてのものから逃れているのに、 やはり安らぎを得られなかったのでしょうか。すでに衰え疲れはてたこの老年も、わたしを自由にしてはくれなかったのでしょうか。
 おお、しぶとい毒薬!老年はわたしをすでに公務から解放してくれたのに、まだ嫉妬からは解放してくれません。 わたしが多くの恩恵をうけている公務はわたしを放免してくれるのに、なんの恩恵もうけていない嫉妬のほうは、わたしをさいなみつづけます。 じつのところ、かつてはもっと丁重な文体の時期もありました。


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