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エントリーNO.206
岩波文庫を1ページ読書
東京に暮らす

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

イギリスの外交官である夫ジョージ・サンソムの赴任にともなって来日したキャサリン・サンソム(1883-1981)が、 昭和初期の東京の街と人々の暮らしを軽妙な筆致で描いた日本印象記。 庶民の姿が暖かいまなざしで描かれ、ほのぼのとした人間観察記になっている。挿絵多数。

発行
岩波文庫 1995年1月13日 第2刷
著者名
キャサリン・サンソム  
タイトル
東京に暮らす (とうきょうにくらす)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  東京に暮す 一九二八~一九三六
   第一章 日本上陸
 真冬にカナダと太平洋を横断するという辛い旅をして東京湾に戻ってきたことがありました。 早朝で、しかも一月の厳冬の中、私は元気なく縮こまっていました。唯一の慰めはこの船での最後の朝食、 カナダ太平洋汽船の(一等の)豪華な朝食でした。 それはハワイ産のパイナップル、柿、ざくろ、ザボン、マンゴといった名前を聞くだけで嬉しくなってしまうような異国の果物に始まり、 続いてコーンフレークやオートミールを始めとする様々な種類のシリアルや卵料理もあります。 それからハム、ソーセージにベーコン、そして最後にホットケーキとメープルシロップが出てきます。
 この豪華な朝食に誘われるかのように私は下の食堂に向かいました。 食事をとれば甲板を吹きつけるこの身を切るように冷たい風も少しは我慢できるだろうと思いながら。
 その時、日本の美しい海岸線が船窓に見えてきたのです。 


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