エントリーNO.200
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シェリ

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

薔薇色のレースに彩られた寝室の中、女はベッドに横たわり、 姿見に映る美しい青年の姿をみつめている----。 五十歳を迎えようとする元高級娼婦と、シェリ(いとしい人)と呼ばれる親子ほども年の違う若者との息詰まるような恋。 ジッドが「一か所として軟弱なところ、冗漫な文章、陳腐な表現もない」と賛嘆したコレット(1873-1954)の最高傑作。

発行
岩波文庫 1994年3月16日 第1刷
著者名
コレット  
タイトル
シェリ  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

 「レア、これぼくに頂戴、あんたの真珠のネックレスさあ!聞いてる、レア?あんたのネックレス、おくれよ!」
 薄暗がりには錬鉄と彫りのある銅でできた大きな寝台が 甲冑(かっちゅう) のような光を放っていたが、 なんの答えもそこから返ってこなかった。
 「あんたのネックレス、くれないってことないだろう?あんたと同じくらい似合うよ。 ぼくのほうが似合うくらいだ」
 留め金がカチリと鳴ると寝台のレースが揺れて、手首のほっそりした素晴らしく形のよいむきだしの腕が物憂げに美しい手をさしのべた。
 「よしてよ、シェリ、さんざ 玩具(おもちゃ) にしたでしょう、そのネックレス」
 「ちょっと楽しんでるだけさ----ぼくに () られるんじゃないかって、 心配してんのかい?」


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