エントリーNO.198
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緋文字

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

胸に赤いAの文字を付け、罪の子を抱いて処刑のさらし台に立つ女。 告白と悔悛を促す青年牧師の苦悩----。 厳格な規律に縛られた17世紀ボストンの清教徒社会に起こった姦通事件を題材として、 人間心理の陰翳に鋭いメスを入れながら、自由とは、罪とは何かを追求した傑作。 有名な序文「税関」を加え、待望の新訳で送る完全版。

発行
岩波文庫 1992年12月16日 第1刷
著者名
ホーソーン  
タイトル
緋文字 (ひもんじ)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  税関
    『緋文字』への序章
 いささか理不尽なことながら----自分や自分のことどもを炉端で、しかも親友に、 ことこまかに語るのは私の趣味ではないのに----自伝を語る衝動が生涯で二度私をとらえ、 こうやって世間に語りかけている。最初のは三、四年前のこと。 そのとき私は----弁解の余地なく、また寛大な読者にせよ、厚かましい筆者にせよ、 とても思い及ばないような理由で----ひっそり静まり返った旧牧師館での生活の記録を読者におひろめしたのであった。 そして今度は----身にあまる光栄ながら、前回には二、三の聞き手に恵まれたものであるから、それに味をしめ---- 私はまたしても公衆の胸倉をつかまえ、税関での三年にわたる私的経験を聞いていただこうという魂胆なのである。 かの有名な『本教区の牧師P・Pの回顧録』のお手本にかほど忠実に従ったものはない。 ところでもっと正直に申し上げると、著者が書物を世に問うときには、たいていの学校友達や生涯の伴侶より著者をよく理解する数少ない人たちに語りかけるのであって、 その書物を途中で投げ出したり、全然見向きもしない多くの人たちに向かって語りかけるのではない。


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