エントリーNO.196
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八十日間世界一周

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

一八七二年一〇月二日午後八時四五分、ロンドンの謹厳な資産家にして知識人フィリアス・フォッグ氏は、 多くの新聞が一斉にとりあげ狂気の沙汰と評した、八〇日間世界一周の旅に出た。 彼はトランプ仲間と、一秒でも遅れると全財産を失うことになる賭をしたのだ。

発行
岩波文庫 2001年4月16日 第1刷
著者名
ジュール・ヴェルヌ  
タイトル
八十日間世界一周 (80にちかんせかいいっしゅう)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  1 フィリアス・フォッグとパスパルトゥー、一方が主人に、
    他方が召使になることを了承しあう

 一八七二年のことであった。バーリントン・ガーデンズ、サヴィル=ロウ七番地の屋敷に、 フィリアス・フォッグという紳士が住んでいた。それは一八一四年にシェリダンが息を引き取ったのと同じ屋敷であった。 フォッグ氏はロンドンの革新クラブのメンバーであった。全会員中、最も風変わりで最も目立った存在の一人であったが、 彼自身の方では、人目につくようなことは一切しないよう努めているように見えた。
 こうして、イギリスが誇る最も偉大な演説家の一人のあとに、フィリアス・フォッグなるこの謎の人物が住むようになったのである。 相当に立派な紳士であるということと、イギリス上流社会きっての貴公子の一人であるということをおいては、彼についての情報は一切なかった。
 バイロンに似ているという噂であったが、それは顔だけの話であって、足の方は申し分なかった。いわば口ひげと頬ひげを生やしたバイロン、 物に動じることのないバイロン、千年生きてなお老いることのないバイロンといった風情なのであった。


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