エントリーNO.192
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幸福の探求

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

世間の波風の及ばない桃源郷のような<幸いの谷>に暮らす王子ラセラスは、 倦怠感を覚え、外の世界に憧れる。 王子は妹ネカヤアらとともに谷を脱出し、広い世間に出て様々な人びとに出会い、真の幸福を探すのだが----。 ボズウェルによる伝記でその名を知られる18世紀英国の傑物ジョンソン博士(1709-1784)が書いた唯一の小説。

発行
岩波文庫 2011年5月17日 第1刷
著者名
サミュエル・ジョンソン  
タイトル
幸福の探求 (こうふくのたんきゅう)アビシニアの王子ラセラスの物語  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

   幸福の探求
    ----アビシニアの王子ラセラスの物語----
  第一章 谷間の宮のたたずまい
 空想の (ささや) きに易々と耳傾け、 希望の幻影を熱烈に追わむ (ともがら) 、 青春の望みは 年長(とした) けて充たされむことを期し、 今日の不足は明日補われむことを期する輩よ。 アビシニアの王子、ラセラスが物語を聞きねかし。
 ラセラスは強大な (みかど) の第四子であった。 この帝の領土内に「水の父」と呼ばれるナイル河は源を発し、この河の恵みが 豊饒(ほうじょう) の流れを各地に (そそ) ぎ、 ひいてはエジプトの収穫を世界の半ばに振りまくのであった。  熱帯地の帝王間に代々伝えられて来た習慣に従い、ラセラスは継承の順序 (きた) って王位に () くまでは、 アビシニア王家の他の王子王女と共に、 (さび) しき一王宮に () () められていた。  古人の 叡智(えいち) がアビシニアの王子たちの住居と定めた場所は、アムハラの王国(アムハラはアビンシニア中心部の州の名。原文に王国とあり、それに従う)の広大な溪谷で、 四方に山をめぐらし、その山々の頂きが中央の谷間を頭上からおおい隠さんばかりであった。
(サイト管理人 注 山をめぐらしの”巡らし”の旧字見当たらず)


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