エントリーNO.176
岩波文庫を1ページ読書
怒りについて

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

ネロー帝に仕える宮廷の生と自決の死----帝国の繁栄と矛盾の中で運命の変転を体現したローマの哲学者セネカ(前4頃ー後65)。 絶対権力を念頭に、怒りという破壊的な情念の分析と治療法を逆説的修辞で論じる『怒りについて』。 苦難の運命と現実の社会の軋礫への覚悟、真の幸福を説く『摂理について』『賢者の恒心について』を併録。新訳。

発行
岩波文庫 2010年5月6日 第3刷
著者名
セネカ  
タイトル
怒りについて (いかりについて) 他二篇  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

ルーキーリウスに寄せる
  摂理について
     摂理が存在しながらも、なぜ
     良き人に災厄が起きるのか
  一
 ルーキーリウス、君は私に尋ねた。いったいなぜ、世界が摂理によって導かれているのに、善き人々に 数多(あまた) の悪が生じるのか、と。 このことは、摂理があらゆる事象を統括し、神がわれわれに関わりをもつということを証明する以上、総合的な扱いの中で論ずるほうがよかったかもしれない。 しかし、全体から小さな一部を引き抜き、係争全体はそのままで、反論を一つだけ解決するのも、いいやり方だ。 私は難しくもない仕事を引き受けて、神々の弁護を行なおう。
 今はことさらに示すまでもないが、これほどの偉大な (わざ) が何らかの監督者なしに存続することはなく、 この 星辰(せいしん) の集合と分離が偶然の衝突に基づくこともない。 偶然の衝撃が引き起こす事象は、 幾度(いくたび) 翻弄(ほんろう) され、たちまち激突する。 だが、いかなる妨げも知らない、この高速の進行は、永遠の法の命令に従いながら、絶え間なく、地と海に、かくも多くの事物を、そしてあのおびただしい 燦然(さんぜん) たる光を、 布置に従い輝き (きら) めく星辰をもたらしていく。


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