エントリーNO.160
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ロウソクの科学

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

一本のローソクに火をともせば、深遠な科学の世界への扉が開く。 製本工から夢を叶え、偉大な科学者になったファラデー(1791-1867)が、 最も愛した聴衆-----少年少女に語りかけ、実験をくりひろげる名講義。 世界中で愛されてきた本書は今なお科学の精神を生き生きと伝える。 現代の読者のために詳細な訳注・解説を付した。新訳。

発行
岩波文庫 2010年9月16日 第1刷
著者名
ファラデー  
タイトル
ロウソクの科学 (ロウソクのかがく)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  序文
 原始的な松のたいまつからパラフィンろうそくまで、この道のりの何と長かったことでしょう。 そしてこの二つには何と大きな違いがあることでしょう。夜になってどのような手段で自分の住み家を照明するかによって、 文明の尺度の中でのその人たちの位置が測れます。素焼きのそまつな容器の中で燃えている極東の 瀝青(れきせい) の液体、 形は精妙でも仕事場にはあまり適さなかったエトルリアのランプ光よりむしろ悪臭でエスキモーやラップランドの人たちの小屋を充たしてしまった、 鯨や、あざらしや、熊の脂肪、祭壇上に輝く大きなワックスロウソク、私たちの街路を照らすさまざまなガス灯など、 すべてが語るべき物語を持っています。もしそれらが口をきくことができたなら、しかも自分なりのやりかたで物語ることができたなら、 皆がそれぞれどんなふうに、人間の心地よい暮らし、家庭への愛、労苦、信仰に奉仕してきたかを語ってくれて、私たちの心をあたためてくれたことでしょう。
 すでに亡くなった何百万もの火を信仰してきた人たち、火を使ってきた人たちの中で、何人かは、火の不思議について考えたでしょう。


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