エントリーNO.158
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生の短さについて

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

生は浪費すれば短いが、活用すれば十分長いと説く「生の短さについて」。 心の平静を得るためにはどうすればよいかを説く「心の平静について」。 快楽ではなく、徳こそが善であり、幸福のためのもっとも重要な条件だと説く「幸福な生について」。 実践を重んじるセネカ(前4頃-後65)の倫理学の特徴がよく出ている代表作3篇を収録。新訳。

発行
岩波文庫 2010年3月16日 第1刷
著者名
セネカ  
タイトル
生の短さについて (せいのみじかさについて) 他2篇  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  一
 パウリーヌス、死すべき身ながら、大方の人間は自然の悪意をかこち、 われわれ人間は (つか) () の生に生れつく、 われわれに与えられたその束の間の時さえ、あまりにも早く、あまりにも 忽然(こつぜん) と過ぎ去り、 少数の例外を除けば、他の人間は、これから生きようという、まさにその生への準備の段階で生に見捨てられてしまうと言って嘆く。 彼らが考えるところの、この万人共通の災いに怨みを () らすのは、 何も一般の大衆や無知な俗衆に限ったことではない。 名のある人々もまた、この思いに (とら) えられ、 怨嗟(えんさ) の声をあげるのである。医家の中でも最も偉大な人の例の言葉も、この思いに由来する。 (いわ) く、「生は短し、術は長い」。 自然を (いさ) めて、哲学にはそぐわない争いを起こしたアリストテレースの告発も、この思いからのものである。 曰く、「自然は動物にはこれほど長い寿命を恵み与え、人間の五倍も十倍も長く生きられるようにしておきながら、 多くの偉業をなすべく生まれついた人間に定められた寿命はあまりにも短い」。 


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