エントリーNO.156
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アメリカ講義

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

これから文学に必要なもの----それは「軽さ」「速さ」「正確さ」「視覚性」「多様性」、、、である。 神話や古今の名著名作を考察の対象に収めながら、 自らが作家として目指してきたところを示しつつ、紀元三千年にいたるまでの長大な未来を視野に入れて疲労した現代文学を蘇らせる処方を語るカルヴィーノ (1923-1985)の遺書。ハーヴァード大学ノートン詩学講義(1985-1986)のために準備された草稿。

発行
岩波文庫 2011年4月26日 第1刷
著者名
カルヴィーノ  
タイトル
アメリカ講義 (アメリカこうぎ)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

カルヴィーノ  アメリカ講義----新たな千年紀のための六つのメモ
 現在、私たちは一九八五年に生きています。新しい千年紀の始まりまで、わずか十五年しか (へだ) たっていません。 今のところ、私にはこの日付が近づきつつあるということから、何か特別な感動が呼びさまされるという感じはいたしません。 どちらにしても、私は未来学についての話をするためにではなく、文学の話をするために、ここに立っているというわけです。 今や閉ざされんとするこの千年紀は、西欧の近代諸言語とまたこれらの諸言語が担っている表現力・認識力・想像力の可能性を探索してきた各国文学が生まれ出て、 みごとに開花するのを目のあたりにしてきたのでした。それはまた、 物体(もの) としての書物が今日の私たちにとって馴染み深い形をとるのを見てきたという点で、 書物の千年紀でもあったのでした。たぶん、この千年紀が今、閉ざされつつあるということの徴候は、いわゆる 工業後(ポスト・インダルトリアル) の、 テクノロジー時代において文学と書物の運命はどうなるのかと、私たちが問いかけるその頻繁さなのでしょう。


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