エントリーNO.130
岩波文庫を1ページ読書

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

紡績業は日本の資本主義の発展にあずかった基幹産業のひとつである。 ヒューマニスト細井(1897-1925)は、この産業を底辺で支えた女子労働者たちの苛酷きわまりない生活を自らの体験と調査に基づいて克明に記録した。 本書をひもとく者は誰しも、近代資本主義の残した傷痕のいかに深く醜いかをしたたかに思い知らされずにいない。
解説=大河内一男

発行
岩波文庫 2009年4月8日 第60刷
著者名
細井 和喜蔵 (ほそい わきぞう)  
タイトル
女工哀史 (じょこうあいし)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  第一  その梗概
    一
 人間が生きて行く上において「衣食住」が必要なことは (いう) () たぬ。 わけても「食」は絶対的必要であって、もし自然の偉力これを剥奪したならば明日から人類は地上に 影をひそめるであろう。しかして次に必要なものは「衣」と「住」である。
 いにしえ我らの先祖は裸体でおった。それは未だ織物が発見されないまえの狩猟時代に、 () った (けもの) の肉を () みその皮を () いで身につけた頃、 またはそれより以前、木の実を食したり木の葉や木の皮を取って体を包んだ時代のあったことを考えれば明らかである。
 昔の人間は食物さえあれば衣服も住居も () らなかった。よし要るとしてもそれはきわめて簡単でことが足りた。 しかし今日まで進化した人類から「衣と住」を切り離して考えることはできない。 今や人間にとって着ることと住むことは、食うことと同じようにほとんど絶対的必需条件とはなったのである。


copyrighit (c) 2011 岩波文庫を1ページ読書