エントリーNO.128
岩波文庫を1ページ読書

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

子どもの個性を見事に描き分けて楽しい「子どもたち」。 南ロシアの曠野を幌馬車に揺られて旅を続ける少年の目に映った豊かな大自然とおとなたちの姿を、倦むことのない悠々たる筆致で描き、チェーホフの作家としての画期をなす中篇「曠野」。 他に、「いたずら」「ワーニカ」「ロスチャイルドのヴァイオリン」「学生」等を収録。

発行
岩波文庫 2009年9月16日 第1刷
著者名
チェーホフ  
タイトル
子どもたち・曠野 (こどもたち・こうや) 他十篇  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  子どもたち
 パパもママもナージャおばさんも 留守(るす) でいない。みんなは、灰色のお馬に乗って行き来するあの年取った将校のところの洗礼式に出かけている。 その帰りを待ちながら、グリーシャ、アーニャ、アリョーシャ、ソーニャ、それに料理女の息子のアンドレイが、食堂のテーブルに向かってロトー遊びをしている。 ほんとうはもう寝る時間なのだ。けれどもママから、洗礼を受けたのはどんな赤ん坊だったか、 どんなごちそうが出たかなどを聞かないうちは、どうして寝られよう。吊りランプに照らされたテーブルは、 数字(すうじ) 胡桃(くるみ) (から) 、紙切れ、ガラスのかけらなどで 斑模様(まだらもよう) になっている。 遊びをしているそれぞれの子どもたちの前には、 数字札(すうじふだ) が二枚ずつ、その数字を隠すためのガラスのかけらがひと山ずつ置いてある。 テーブルの真ん中には、一コペイカ銅貨の五枚のった小皿が (しら) んで見える。 小皿のそばには、食べかけの 林檎(りんご) 林檎、 (はさみ) 、それに胡桃の殻を入れるための深皿が置いてある。


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