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エントリーNO.127
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解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用) マチウ、三十四歳、自由を主義とする哲学教師。 その恋人が妊娠した。堕胎の金策に走り回るマチウ、悪の意識を研ぎ澄ます友人ダニエル、青春を疾走する姉弟。 第二次大戦前夜パリ三日間の物語。大人とは?参加=拘束とは?自由とは?二十世紀小説史の金字塔。 |
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発行
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岩波文庫 2009年8月6日 第2刷
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著者名
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サルトル
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タイトル
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自由への道 (じゆうへのみち) 全6冊
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Ⅰ
ヴェルサンジェトリクス通りの中ほどで、背の高い男がマチウの腕をつかんだ。向かいの歩道では警官がひとり行き来している。
「いくらかくれよ、だんな、腹ぺこなんだ」
両眼が寄っていて、厚い唇から、アルコールの匂いがする。
「むしろ飲みたいってことじゃないのか」とマチウが言った。
「いや本当だよ、おっさん」と男はやっとのことで言った、「本当だよ」
マチウはポケットの中に百スー硬貨(五フラン)があるのを見つけた。
「どうでもいいのさ。ちょっと言ってみただけよ」
マチウは百スーを渡した。
「やってくれるね」と壁によりかかりながら男は言った、「すげえ願い事をあんたにしてやろう、何がいい」