[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

エントリーNO.121
岩波文庫を1ページ読書

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

二〇世紀初頭のイギリスにガードナー、ルーカス、リンド、ミルンの四人を代表とするエッセイ文学が一斉に開花した。 イギリス流のユーモアと皮肉を最大の特色として、身近な話題や世間を賑わせている事件を取り上げ、人間性の面白さを論じてゆく。

発行
岩波文庫 2010年4月15日 第3刷
編訳
行方 昭夫 (なめかた あきお)  
タイトル
大した問題じゃないが (たいしたもんだいじゃないが)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  1 ガードナー
  配送されなかった手紙
 今朝、ジャケットのポケットから古い手紙の束を取り出した。探している書類があったからだが、そこにはなかった。 でも驚きはしなかった。ポケットに探しているものがなくても、決して驚かない。 長い経験で、自分が探しているもの、あるいは当然そこにあるべきものが、ポケットに見つかるとは期待しない。 その一方、ポケットの中で、 () らないものを見つけることが多い。 無くしたいのに、それを拒むもの、どうでもいいもの、厄介なもの、古い請求書、消えた手紙の封筒、もう用のない事柄についてのメモなどが見つかる。 時には、ぎょっとするようなものが見つかる。そして突然 狼狽(ろうばい) した時しか出さぬような叫び声をあげて () びあがってしまう。
 実は、今朝がそうだった。必要な書類はなかったのだが、二週間前に書き、封筒に入れ、住所を書いて、切手を貼ったのだが投函しなかった二通の手紙を見つけたのだ。 一通はどうでもよかったが、もう一方は大事な手紙だった。


copyrighit (c) 2011 岩波文庫を1ページ読書