エントリーNO.113
岩波文庫を1ページ読書

解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

歌人の感性と学者の分析、釈迢空の名を持つ折口信夫(1887-1953)のふたつの眼はともに鋭い。 歌の歴史と味わい方を若い読者に語る「歌の話」、歌の宿命と未来を問う短歌滅亡論「歌の円寂する時」。 女歌の力を汲み上げる「女流短歌史」を併録。 解説=岡野弘彦

発行
岩波文庫 2009年10月16日 第1刷
著者名
折口信夫 (おりぐちしのぶ)  
タイトル
歌の話・歌の円寂する時 (うたのはなし・うたのえんじゃくするとき) 他1篇  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  歌の話
      短歌の起り
 短歌は、 唯今(ただいま) では一般に、うたといっています。けれども大昔には、うたと名づくべきものが多かったので、 そのうち、一番後に出来て、一番完全になったものが、うたという名をもっぱらにしたのであります。
 こういうと、不思議に思う方があるかも知れません。あなた方の御覧の書物には、たいてい短歌の起こりを、 神代のすさのおの (みこと) のお作からとしているでしょう。もちろんこれは、古くからのいい伝えで、 あなた方が、古代と考えていられる奈良朝よりも、もっともっと以前から、そう信じていたのです。 だからその点において、そのお歌が、第一番のものでなくとも、何も失望する必要はありません。
 短歌の出来るまでには、いろんな形をとおって来ています。第一に、世間の人は、短 い単純なものが初めで、それが拡がって、長い複雑なものとなるという考え方の、癖を持っています。


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