エントリーNO.110
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解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

新美南吉(1913-1943)は、わずか29歳、 2冊の童話を出版しただけでこの世を去ったが、底抜けに明るく、 ユーモアと正義感にあふれた彼の童話は、今日多くの人の心をとらえ、 賢治、未明、三重吉らとならぶ児童文学の代表的作家のひとりとなった。 代表作14篇を収録。
挿絵=棟方志功、谷中安規

発行
岩波文庫 2009年3月13日 第13刷
著者名
新美 南吉 (にいみ なんきち)  
タイトル
新美南吉童話集 (にいみなんきちどうわしゅう)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  ごん狐
     一
 これは、 (わたし) が小さいときに、村の 茂平(もへい) というおじいさんからきいたお話です。 むかしは、私たちの村のちかくの、 中山(なかやま) というところに小さなお城があって、 中山さまというおとのさまが、おられたそうです。
 その中山から、少しはなれた山の中に、「ごん (ぎつね) 」と言う狐がいました。ごんは、 一人(ひとり) ぼっちの子狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。 そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出て来て、いたずらばかりしました。 はたけへはいって芋をほりちらしたり、 菜種(なたね) がらの、ほしてあるのへ火をつけたり、 百姓家(ひゃくしょうや) の裏手につるしてあるとんがらしをむしりとって、いったり、いろんなことをしました。
  或秋(あるあき) のことでした。二、三日雨がふりつづいたその (あいだ) 、ごんは、 外へも出られなくて穴の中にしゃがんでいました。         


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