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エントリーNO.99
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
本書に収められた5つの短篇は、トルストイ晩年の執筆になる民話である。 この頃作者は、宗教的・道徳的傾向を著しく深めていた。 そして苦悩に満ちた実生活を代価として購ったかけがえのない真実が、 幾多のの民話となって結晶していった。 これらの作品には、素朴な人間の善意に対する信頼と安らかな息吹きが満ちあふれている。

発行
 岩波文庫 2009年5月7日 第88刷
著者名
 トルストイ
タイトル
 人はなんで生きるか (ひとはなんでいきるか)
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  人はなんで生きるか
 ひとりの靴屋が、女房や子供たちといっしょに、ある百姓の家のひとまを借りて住んでいた。 この靴屋には、自分の家も地面もなかったので、靴を作ったり直したりして、一家のくらしをたてていた。 パンは高いのに、手間賃は安かったから、かせぎはみんなたべてしまった。靴屋は、 女房と仲間で毛皮裏の外套を一枚だけ持っていたが、それももうぼろぼろに着古されていたので、 すでに二年ごし、新しい外套にする毛皮を買う心づもりをしてきた。
 秋になると、靴屋の手もとにはいくらか小金がたまった----女房の手ばこの中に三リーブリの紙幣がはいっていたし、 ほかに五リーブリ二十カペイカ、村の百姓たちに貸しがあった。 そこで、ある日靴屋は、朝から村へ毛皮を買いに行く支度をした。 彼はシャツの上へ綿のはいった女房の南京木綿のジャケツを着て、その上からラシャの長上衣をはおり、 三ルーブリ紙幣をポケットへ入れて、折った木の枝を杖にし、朝食をすますとさっそく、 出かけた。彼は考えていた----<<百姓たちから五ルーブリ受け取ったら、それにこの三ルーブリをたして、 外套につける羊皮を買おう>>と。

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