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エントリーNO.96
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
「墨汁一滴」に続き、新聞「日本」に連載(明治35.5.5-9.17)し、 死の2日前まで書き続けた随筆集。不治の病についた「病牀六尺」の世界で、 果物や草花の写生を楽しむ一方、シッポク談義、 子供の教育論と話題は多岐にわたるが、 旺盛な好奇心が尽きることない子規の姿には全く目をみはらされる。 解説=上田三四二

発行
 岩波文庫 2009年5月7日 第61刷
著者名
 正岡 子規 (まさおか しき)
タイトル
 病牀六尺 (びょうしょうろくしゃく)
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

◯病床六尺、これが我世界である。しかもこの六尺の病床が余には広過ぎるのである。 (わず) かに手を延ばして畳に触れる事はあるが、 蒲団(ふとん) の外へまで足を延ばして体をくつろぐ事も出来ない。 (はなは) だしい時は極端の苦痛に苦しめられて五分も一寸も体の動けない事がある。 苦痛、煩悶、号泣、 麻痺剤(まひざい) 、 僅かに一条の活路を死路の内に求めて少しの安楽を (むさぼ) 果敢(はか) なさ、 それでも生きて居ればいひたい事はいひたいもので、毎日見るものは新聞雑誌に限って居れど、 それさへ読めないで苦しんで居る時も多いが、読めば腹の立つ事、 (しゃく) にさはる事、 たまには何となく嬉しくてために病苦を忘るるような事がないでもない。 年が年中、しかも六年の間世間も知らずに寝て居た病人の感じは先づこんなものですと前置きして
◯土佐の西の端に柏島といふ小さな島があつて二百戸の漁村に水産補修学校が一つある。 教室が十二坪、事務所とも校長の寝室とも兼帯で三畳敷、実習所が五、六坪、経費が四百二十円、 備品費が二十二円、消耗品費が十七円、生徒が六十五人、校長の月給が二十円、 しかも四年間昇給なしの二十円ぢやそうな。

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