[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

表紙一覧へ        次のエントリーへ

エントリーNO.94
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
「安寿恋しや、ほうやれほ。厨子王恋しや、ほうやれほ」、 また少女いちの「お上の事には間違いございますまいから」など、 読者はこれらの文言を一度読んだら決して忘れないであろう。 烈しい感情を秘めつつ淡々とした文体で描いた6篇の作品は、 鴎外が晩年に到達した文学的境地を余すところなく示している。 解説=斎藤茂吉
(サイト管理人 注 ”もり おうがい”の”おう”旧漢字を”鴎”にて表現。)

発行
 岩波文庫 2009年7月6日 第11刷
著者名
 森 鴎外 (もり おうがい)
タイトル
 山椒大夫・高瀬舟 (さんしょうだゆう・たかせぶね) 他4篇
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    山椒大夫
 越後の 春日(かすが) を経て 今津(いまづ) へ出る道を、 珍らしい旅人の 一群(ひとむれ) が歩いている。母は三十歳を
こえたばかりの女で、 二人の子供を連れている。姉は十四、弟は十二である。 それに四十の女中が一人附いて、 草臥(くたび) れた 同胞(はらから) 二人を、 「もうじきにお宿にお (つき) なさいます」といって励まして歩かせようとする。 二人の中で、姉娘は足を () () るようにして歩いているが、 それでも気が勝っていて、疲れたのを母や弟に知らせまいとして、 折々思い出したように弾力のある 歩附(あるきつき) をして見せる。 近い道を 物詣(ものまいり) にでも歩くのなら、 ふさわしくも見えそうな一群であるが、 (かさ) やら杖やら 甲斐甲斐(かいがい) しい 出立(いでたち) をしているのが、 (たれ) の目にも珍しく、また気の毒に感ぜられるのである。
 道は百姓家の断えたり続いたりする間を通っている。 砂や小石は多いが、 秋日和(あきびより) () (かわ) いて、 しかも粘土が (まじ) っているために、好く固まっていて、 海の (そば) のように (くるぶし) (うず) めて人を悩ますことはない。
  藁葺(わらぶき) の家が何軒も立ち並んだ 一構(ひとかまえ) (ははそ) の林に囲まれて、 それに夕日がかっと差している (ところ) に通り () かった。
  (サイト管理人 注 二行目 ”こえた” 旧字見当たらず)

表紙一覧へ        次のエントリーへ


copyrighit (c) 2011 岩波文庫を1ページ読書