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エントリーNO.83
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
平凡無垢な青年ハンス・カストルプははからずもスイス高原のサナトリウムで療養生活を送ることとなった。 日常世界から隔離され、 病気と死が支配するこの「魔の山」で、カストルプはそれぞれの時代精神や思想を体現する特異な人物たちに出会い、 精神的成長を遂げてゆく。「ファウスト」とならんでドイツが世界に贈った人生の書。

発行
 岩波文庫 2007年7月5日 第29刷
著者名
 トーマス・マン
タイトル
 魔の山 (まのやま) 全2冊
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

  第 一 章
  到着
 単純な一青年が、夏のさかりに、生まれ故郷のハンブルクからグラウビュンデン州のダヴォス・プラッツにむかって旅だった。 ある人を訪ねて三週間の予定の旅であった。 ハンブルクからダボォスまでのぼるのは、遠い旅であって、三週間という滞在日数にくらべて、 ほんとうは遠すぎる旅であった。いくつもの国々を通してもらい、山をのぼり、山をくだり、 南ドイツの高原からボーデン湖畔へくだり、そこからおどる波をわたり、 かつては底なしといわれた (ふち) を船でわたるのである。
 そこまでは大まかに直線的にすすんだ旅は、そこからややこしい旅になる。たびたび待たされたり、 さまざまな厄介な目にあったりする。スイス領のロールシャハでふたたび汽車にのるが、 一まずアルプスの小駅ラントクアルトまで行くだけで、そこでまた汽車をのりかえなくてはならない。 吹きさらしの、あまり魅力のない場所でずいぶん待たされてから、 こんどは 狭軌(きょうき) の汽車にのるのだが、 形こそ小さいが 牽引力(けんいんりょく) はものすごいらしい機関車が引っぱりはじめるとたんに、 こんどの旅のほんとうに冒険的な部分がはじまり、 急勾配(きゅうこうばい) のねばりづよいのぼりになって、 それがいつおわるともみえない。

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