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エントリーNO.82
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
比較言語学・説話学の分野に偉大な足跡をしるすグリム兄弟が、 ドイツ各地で口から耳へと伝えられた昔話の数かずをあまねく採録。 児童文学の一大宝庫であり、民間伝承研究に不可欠の文献である。 名訳をもって知られるこの金田訳は、1857年刊の原著決定版から削除された昔話をも数多く収録する。 KHM番号を付記した。

発行
 岩波文庫 2009年5月25日 第51刷
訳者名
 金田 鬼一 (かねだ きいち)
タイトル
 グリム童話集 (グリムどうわしゅう) 全5冊
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

   一  蛙の王さま  (一名)鉄のハインリヒ
むかしむかしのおお (むかし) 、まだ人のねがいごとがなんでもかなったころのこと、 一人(ひとり) の王さまが () んでいました。 王さまのお (ひめ) さまがたは、どれもこれも、 うつくしかったのですが、そのなかでも、いちばんすえのかたは、きわだってうつくしく、お日さまなどは、そういうのをたくさん見なれていらっしゃるのに、 このおひめさまばかりは、 (かお) をお () らしになるたんびに、 どうしてこんなにうつくしいのかと、ふしぎにおぼしめすほどでした。
 王さまのお (しろ) のちかくに、 大きな (くら) い森があって、 その森のなかには、 菩提樹(ぼだいじゅ) 古木(こぼく) の根がたに、 水のもくもくわきだしているところが一かしょありました。 熱くってしょうのない日には、 おひめさまは森のなかにはいって、このすずしい (いずみ) のへりにすわることにしていました。 それから、 退屈(たいくつ) すると、 黄金(きん) のまりをだして、 それをまっすぐにほうりあげては、落ちてくるのを下でうけとるのがおきまりで、 これが、おひめさまのなによりすきな 遊戯(ゆうぎ) でありました。
 ところが、あるとき、この 黄金(きん) のまりが、 どうしたのか、お姫さまのさしあげていたかわいらしい手のなかへは落ちてこず、 すれちがいに () めんへすとんとおちて、 そのまま、ころころと、水のなかへころげこみました。 おひめさまはまりのころがったほうへ目をつけましたが、まりは (かげ) もかたちもありません。 泉は、ふかいのなんの、 (そこ) なんかとても見えるものではないのです。

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