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エントリーNO.5
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
著者(1899-1981)がコペル少年の精神的成長に託して語り伝えようとしたものは何か。 それは、人生をいかにに生くべきかと問うとき、 常にその問いが社会科学的認識とは何かという問題と切り離すことなく問われねばならぬ、 というメッセージであった。 著者の没後追悼の意をこめて書かれた「『君たちはどう生きるか』をめぐる回想」(丸山真男)を付載。

発行
 岩波文庫 2008年3月5日 第58刷
著者名
 吉野 源三郎 (よしの げんざぶろう)
タイトル
 君たちはどう生きるか
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

               まえがき
 コペル君は中学二年生です。  ほんとうの名は 本田潤一(ほんだじゅんいち) 、 コペル君というのはあだ名です。年は十五ですが、十五にしては小さいほうで、実はコペル君も、かなりそれを気にしています。
 毎学期のはじめ、体操の先生が全級を整列させて, 帽子(ぼうし) を取らせ、 (せい) の高さを見て整列の順を変えるとき、 コペル君はそっと 砂利(じゃり) の上に靴のかかとを乗せたり、 出来るだけ首をのばしたりして、なんとか順序を繰りあがろうと苦心するのですが、成功したためしがありません。 「ガッチン」というあだ名のある 北見(きたみ) 君と、いつも二位、三位を争って、 お互いに抜いたり抜かれたりしています。もちろん、ビリからです。
 ところが、成績の方からいうとその逆で、たいてい一番か二番、三番と落ちたことはめったにありません。 この方は,もちろん、ほんとうの成績順で数えてです。 といって、コペル君は 点取虫(てんとりむし) の勉強家というわけではなく、 どうして、遊ぶことは人一倍好きな方です。

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