エントリーNO.470
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マリー・アントワネット

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

どこと言って非凡なところなどない人間に、歴史は大きな役割をふりあてることがある。 虚名のみ高く、毀誉褒貶半ばするマリー・アントワネット。 ツワイク(1881-1942)はその生涯を、あるいは王家の寝所の秘事に、あるいは国民議会の緊迫した局面にと巧みな筆運びで追い、 ひとりの平凡人に凝集する壮大な歴史のドラマを展開する。

発行
岩波文庫 1999年1月5日 第35刷
著者名
シュテファン・ツワイク  
タイトル
マリー・アントワネット (全2冊)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    第一章  結婚させられた子ども
 何世紀ものあいだ、ハプスブルク家とブルボン家は、ヨーロッパの覇権をめざして、ドイツ、イタリア、フランドルのいくたの戦場に闘いつづけてきたが、 ついに両家はともども疲れはててしまった。最後の時になってこの昔からの競争相手は、彼らの倦むことのない嫉視反目も、 ただ他の諸王家に道をあけてやるために争ったにすぎないことをさとった。 すでに島国イギリスからは、異教の民が世界帝国建設に触手をのばしており、すでに新教国マルク・ブランデンブルクは、 強力な王国に成長しつつあり、すでに半ば異教のロシアは、その勢力圏を無限に拡大しようと構えている。 こうして例によって遅まきながら両家の支配者と、その外交官たちは自問しはじめた----このような無信仰な成り上りどもに漁夫の利を得させるために、 またしてもまたしても宿命的な戦争をくりかえしているよりは、むしろたがいに平和を保つほうがましなのではあるまいかと。 ルイ十五世の宮廷ではショワズール、マリア・テレサの知恵袋カウニッツ、このふたりが同盟を計画する。 そしてこの同盟が永続して、単に二つの戦争の中休み、息ぬきに終わらないように、ハプスブルク家とブルボン家の両王朝を血で結びあわせようと彼らは提案する。


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