エントリーNO.397
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孔子

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

ヨーロッパの古典フィロロギーの方法にもとづいて、孔子とその弟子達の言行録である『論語』を読みとき、 その成立過程を明快に分析した小さな名著。 全篇を一貫する広い視野、随所にあらわれる知性の天才的なひらめき、 達意の美しい文章から、あたかも第一級の推理小説を読む如き高度の喜びと楽しみが与えられる。
(解説=大室幹雄)

発行
岩波文庫 1989年2月2日 第2刷
著者名
和辻 哲郎 (わつじ てつろう)  
タイトル
孔子 (こうし)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    一  人間の教師
 釈迦、孔子、ソクラテス、イエスの四人をあげて世界の四聖と呼ぶことは、だいぶ前から行われている。 たぶん明治時代の我が国の学者が言い出したことであろうと思うが、その考証はここでは必要でない。 とにかくこの四聖という考えには、西洋にのみ (かたよ) らずに世界の文化を広く見渡すという態度が含まれている。 インド文化を釈迦で、シナ文化を孔子で、ギリシア文化をソクラテスで、またヨーロッパを征服したユダヤ文化をイエスで代表させ、そうしてこれらに等しく高い価値を認めようというのである。 ではどうしてこれらの人物が、それぞれの大きい文化潮流を代表し得るのであろうか。 どの文化潮流も非常に豊富な内容をもっているのであって、一人の人物が代表し得るような単純なものではないはずである。 しかも人がこれらの人物をそれぞれの文化潮流の代表者として選び、そしてまた他の人々がそれを適切として感ずるのは、何によるのであろうか。 自分はそれを、これらの人物が「人類の教師」であったという点に見いだし得ると思う。


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