エントリーNO.307
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蹇蹇録

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

日清戦争当時の外務大臣、陸奥宗光(1844-1897)の外交回顧録。 日清戦争に際し、国際政治の動向を透徹した目で洞察し、卓越した識見を以て外交にあたった 宗光の姿を彷彿とさせる名著。 諸刊本の異同を綿密に校訂、推敲に推敲を重ねたといわれる本書の成立事情が初めて明らかにされた。 書名は、「蹇蹇匪躬」という「易経」の言葉による。

発行
岩波文庫 1983年7月18日 第1刷
著者名
陸奥 宗光 (むつ むねみつ)  
タイトル
蹇蹇録 (けんけんろく)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

        蹇 蹇 録
   第一章  東学党の乱
 朝鮮の東学党なるものに対しては内外国人、種々の解釈を下せり。 あるいは儒教、道学を混合したる一種の宗教的団結なりといい、あるいは朝鮮国内における一派政治改革希望者の団体なりといい、 あるいは単に好乱的 兇徒(きょうと) 嘯集(しょうしゅう) する者なりといえり。 今その性質を討究するはここに必要なければ略す。 要するにこの名称を有する一種の乱民は、明治二十七年四、五月の交より朝鮮国全羅、忠清両道の各処より蜂起し、 所在民舎を 劫掠(ごうりゃく) し地方官を駆逐し、 (ようや) くその先鋒本部を京畿道の方に進め、 全羅道の首府たる全州府もまた一時はその 手裡(しゅり) に落ち、 勢いすこぶる 猖獗(しょうけつ) なりしは事実なり。 而して日清両国が各ゝその主張する所の権利と持論とに因り、互いにその軍隊を韓地に派遣するに至りたることも、 その後幾回か形勢の変転を経て日清両国


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