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エントリーNO.18
岩波文庫を1ページ読書
           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
宮沢賢治の童話はその詩とともにきわめて特異なものである。 「あなたのすきとおったほんとうのたべもの」になることを念じて書かれた心象的なこの童話のひとつひとつは、 故郷の土と、世界に対する絶えざる新鮮な驚きのなかから生まれたものである。 どの一篇もそれぞれに不思議な魅力をたたえた傑作ぞろい。

発行
 岩波文庫 2008年9月16日 第82刷
著者名
 宮沢 賢治 (みやざわ けんじ)
タイトル
 銀河鉄道の夜 (ぎんがてつどうのよる)
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

     北守将軍と三人兄弟の医者
   一 三人兄弟の医者
 むかしラユーという 首都(しゅと) に、兄弟三人の医者がいた。 いちばん上のリンパーは、普通の人の医者だった。 その弟のリンプーは、馬や羊の医者だった。 いちばん末のリンポーは、草だの木だのの医者だった。 そして兄弟三人は、町のいちばん南にあたる、黄いろな (がけ) のとっぱなへ、 青い (かわら) の病院を、 三つならべて建てていて、てんでに白や朱の旗を、 風にぱたぱた言わせていた。
 坂のふもとで見ていると、漆にかぶれた坊さんや、少しびっこをひく馬や、 しおれかかった 牡丹(ぼたん) (はち) を、車につけて引く園丁や、 いんこを入れた鳥かごや、次から次とのぼって行って、さて坂上に行き着くと、 病気の人は、左のリンパー先生へ、馬や羊や鳥類は、中のリンプー先生へ、 草木をもった人たちは、右のリンポー先生へ、三つにわかれてはいるのだった。

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