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エントリーNO.90
岩波文庫を1ページ読書

           解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)
親友のいいなずけロッテに対するウェルテルのひたむきな愛とその破局を描いたこの書簡体小説には、 若きゲーテが味わった青春の情感と陶酔、 不安と絶望が類まれな叙情の言葉をもって吐露されている。 晩年、詩人は「もし生涯に『ウェルテル』が自分のために書かれたと感じるような時期がないなら、 その人は不幸だ」と語った。

発行
 岩波文庫 2009年4月24日 第84刷
著者名
 ゲーテ
タイトル
 若きウェルテルの悩み (わかきウェルテルのなやみ)
                    上記著作より、本文書き出し1ページを引用

   第 一 巻
                           一七七一年 五月四日
 離れてきてしまってほんとうによかった。友よ、人間の心というものはふしぎなものだね。 あれほども懐かしく去りがたかった君から別れて、 しかもよろこんでいるのだから!しかし、君は赦してくれるだろう。 君以外の人たちとのあのいきさつは、まさに私のような人間をくるしめようとて、 運命がわざわざ選びだしたようなものだった。 レオノーレにはほんとうにきのどくなことだった! でも、私には罪はないのだよ。どうにも仕方はなかった。 あのひとの妹のもっている独特の魅力が私には楽しかったのだが、 そのうちにあのひとの心の中で私への情熱がきざしてしまったのだもの。 といっても----私はまったく潔白だろうか?あのひとの気持ちをそそったようなことがなかったろうか? あのひとの素朴な振舞いをべつにおかしくもないのに皆でよく笑ったものだったが、 この私もそれを面白がっていたし、その上----。 おお、こんなに自分の愚痴をいうとはなんたることだろうかね! 友よ、君に約束するが、私は自分を改めて、運命がわれらに課したわずかばかりの苦しみを、 もはやこれまでの習いのようにくよくよと思い煩うことはやめるつもりだ。

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