エントリーNO.479
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中世騎士物語

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

アーサー王、トリスタンとイゾルデ、パーシヴァル等々、伝説やオペラの主人公として活躍する王や騎士、貴婦人たち。 彼らは騎士道の典型----力、勇気、謙譲、忠誠、憐憫、貞淑など諸徳を具備した人間として登場する。 『ギリシア・ローマ神話』で神々の世界をいきいきと伝えたブルフィンチ(1796-1867)は、 本書で中世の人々をも鮮やかに現出させている。

発行
岩波文庫 1984年5月16日 第40刷
著者名
ブルフィンチ  
タイトル
中世騎士物語 (ちゅうせいきしものがたり)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

     アーサー王とその騎士たち
  第一章 序説
 西暦五世紀頃、ローマ帝国が滅亡すると、北部ヨーロッパ諸国には国家的な政府はほとんどなくなったような状態になった。 多少とも勢力のある領主たちが、それぞれの領地内で権力を振って地方の政治を執り、たまに共通の目的のため、団結することはあっても、 ふだんは大方反目し合っているのが常であった。かかる状態のもとでは、平民の権利というものは 蹂躙(じゅうりん) されるままであったから、 もし領主たちの勝手な権力を抑圧するなんらかの力がなかったら、おそらく社会は野蛮時代へ逆行してしまったであろう。 幸いにもそれを喰い止める力は、先ず領主たち自身がお互いに対抗し合っているという点に見出された。 相互の嫉妬心が彼らを 掣肘(せいちゅう) する結果になったからである。


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