エントリーNO.477
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心理学

解説文(「岩波文庫解説総目録」或いは、表紙より引用)

常に自然科学としての心理学をめざしたジェームズ(1842-1910)は、心理学の目的を、意識状態(心的状態)そのものを記述し説明することであるとし、 その説明のために、意識状態の原因、条件、結果などに関して、意識状態と内外の関係を支配する法則を発見しようとした。 主著『心理学原理』の短縮版(1892)。(全2冊)

発行
岩波文庫 1992年12月16日 第1刷
著者名
W.ジェームズ   
タイトル
心理学 (しんりがく) 全2冊  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

    第一章  序章
 心理学の定義は、ラッド教授の言うように意識状態そのものの記述および説明というのが最もよい。 意識状態とは、感覚、欲望、情動、認知、推理、決断、意志などのようなもののことである。 もちろん「説明」と言うからには、その原因、条件、およびその直接の結果などを、確かめることができる限り研究しなければならない。
 本書では、心理学を一自然科学として取り扱うつもりである。これには一言の説明が必要である。 大抵の思想家は、すべての事物に関する科学は根底ではただ一つあるのみで、すべてが知り尽くされるまでは何一つとして完全に知ることはできないという信仰をもっている。 このような科学は、もし実現されたとすればむしろ哲学であろう。当面そのような科学は到底実現されそうにもない。 そしてその代わりにわれわれは、異なった場所で生じ、ただ実際上の便宜のためにお互い分かれ分かれになっている知識の端緒を数多くもっている。 これらが今後発達して、最終的には一つの真理の体系に合体するかも知れない。 われわれはこれらの学問の暫定的端緒を、複数形で「諸科学」(sciences)と呼ぶ。


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