エントリーNO.138
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解説文(「岩波文庫解説総目録」より引用)

原題「シンポシオン」とは「一緒に飲む」というほどの意味。 一堂に会した人びとが酒盃を重ねつつ興にまかせて次つぎとエロス(愛)賛美の演説を試みる。 談論風発、最後にソクラテスが立ってエロスは肉体の美から精神の美、さらに美そのものへの渇望すなわちフィロソフィア(知恵の愛)にまで高まると説く。 プラトン対話篇中の最大傑作。

発行
岩波文庫 2010年4月15日 第81刷
著者名
プラトン  
タイトル
饗宴 (きょうえん)  
 
上記著作より、本文書き出し1ページを引用

   アポロドロス  友人
 (一)アポロドロス  君達が尋ねていることに対しては、僕にも下稽古ができていなくはないように思う。 というのは、この間ファレロンの (うち) から (まち) の方へ登り道を登っていると偶然一人の知人が (うしろ) から僕を見つけて、遠くから声をかけ、 ふざけた呼び方をして、『おおい、ファレロン男、そこなアポロドロス、待たんかい!』といったのだ。 そこで僕は立止まって待っていた。 すると彼がいうには、『アポロドロス、実はちょうど君を探していたところなのだ、アガトンやソクラテスやアルキビヤデスや、 そのほか当時宴会の席にいた人達の会合の事が、とりわけその時皆が愛についてやった演説が、どんなだったか、それが詳しく訊いて見たかったのでね。 実はほかにも一人、その事をフィリッポスの息子のフォイニックスから聞いたと言って、僕に話してくれた者もあるにはある、が、その男はまた君も知っているといっていた。 ところが当人は少しも精確なことを話すことができなかったのだ。だから君一つ話してくれないか、例の君の友人の演説を伝えるには君ほどの適任者はないのだから。 だが、まず第一にきかしてくれ給え、君自身あの会合に居合わせたのか、それとも居合わせなかったのか。』


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